同じ色鉛筆で同じものを描いたのに、ノートの切れ端とスケッチブックとでは、まるで別の絵のように見えた。そんな経験はありませんか。線がすっと伸びる紙もあれば、ところどころかすれて、ざらりとした表情になる紙もあります。
その違いを生んでいるのが、紙の目です。ここでいう紙の目とは、紙の表面にある細かな凹凸のこと。英語では「トゥース(歯)」とも呼ばれ、色鉛筆の芯の粉を引っかけて受け止める役目をしています。目で見ても気づきにくいほど小さな凹凸ですが、線の太さや発色、重ね塗りのしやすさまで左右します。紙を描くための台ではなく、色鉛筆と一緒に絵を作る画材のひとつと考えると、紙選びがぐっと楽しくなります。
滑らかな紙と粗い紙で線はどう変わるか
表面が滑らかな紙では、芯が凹凸に跳ねにくいので、輪郭線や細かな模様をそろえて描けます。動物の毛並みや植物の葉脈、建物の飾りなど、細部をくっきり見せたい絵に向いています。ただ、色を受け止める凹凸が少ないぶん、強い筆圧で何度も塗ると表面がつるりと埋まり、上から重ねた色がのりにくくなります。
目の粗い紙では、芯が凸部にだけ触れ、くぼみには紙の白が残ります。線は細かく途切れ、粒が散ったような表情になります。
紙の白を光として使う
粗い紙に残る白い点々は、塗り残しに見えるかもしれません。けれど、この隙間をそのまま生かすと、石や樹皮、ざっくりした布、雲の縁など、ざらついた質感が自然に出てきます。すべてを塗りつぶさなくても、見る人の目が隙間を補い、ひとつの面としてまとめてくれるからです。
コツは、最初から力を入れないことです。色鉛筆を少し寝かせて弱い筆圧で動かし、凸部だけに色をのせるつもりで塗ります。明るく見せたいところはここで止め、暗くしたいところだけ、線の向きを変えて重ねていきます。
秋の木の幹や、落ち葉の積もった地面を描くときにも試してみてください。紙の白が、表面に当たる光のきらめきに見えてきます。
厚さと目の細かさは別の性質
紙を選ぶとき、つい「厚いほうが本格的」と考えがちです。けれど、厚い紙だから粗い、薄い紙だから滑らか、とは限りません。厚さは主に、紙の丈夫さや、水を使う画材を重ねたときの波打ちにくさに関わります。一方、目の細かさは、描き心地や線の表情に関わります。
そこで、紙は二つの軸で選んでみてください。ひとつは「どれくらいの丈夫さが必要か」、もうひとつは「どんな線で描きたいか」です。細部を描き込みたい静物や動物なら目の細かい滑らかな紙、ざらついた質感ややわらかな空気感を出したい風景なら、ほどよい凹凸のある紙が向いています。
手元の紙で今日できる小さな実験
新しい紙を用意する前に、家にある紙で比べてみましょう。
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手触りの違う紙を集める
コピー用紙、ノート、スケッチブック、封筒の裏など、触ったときの感触が違うものを3種類ほど集めます。
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枠を三つ描いて塗り分ける
それぞれの紙に3センチ四方の枠を三つずつ描き、同じ1本の色鉛筆で塗ります。一つ目は弱い筆圧で一方向に、二つ目はその上から向きを変えてもう一度重ね、三つ目は二つ目と同じように塗ったあと、別の色を一層のせます。
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少し離れて見比べる
紙の白の残り方や、三つ目の枠で後から重ねた色がきれいにのったかどうかを確かめます。
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似合うモチーフをメモする
それぞれの枠の下へ「細部向き」「ざらざらした質感向き」のように、似合いそうなモチーフを書き添えておきます。
この小さな見本帳が、次に描くときの紙選びの手がかりになります。
用意するもの
試し塗りに使う色鉛筆は、1本あれば十分です。紙の違いを確かめたら、細部向きの紙には油性の色鉛筆を、厚めの紙には水彩色鉛筆を合わせるなど、紙と画材の組み合わせも楽しんでみてください。
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まとめ
紙の目は、色鉛筆の線と発色を受け止める小さな凹凸です。滑らかな紙は細部をくっきりと見せ、粗い紙は白い隙間ごと質感を描き出してくれます。厚さと目の細かさは別の性質なので、丈夫さと描き心地をそれぞれ見て選ぶのがコツです。
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同じ色、同じ筆圧で試し塗りをするだけで、手元の紙の個性が見えてきます。