水彩色鉛筆に水を足したとたん、色が思った以上に広がってしまったり、乾いたらまだらなムラが残っていたりして、がっかりした経験はありませんか。とくに湯気のような形のないものは、塗りすぎると重くなり、控えると何を描いたのか伝わりにくい、加減の難しいモチーフです。
けれど、にじみは「止める場所」と「水の量」を決めておくだけで、ぐっと扱いやすくなります。肌寒くなる晩秋は、温かい飲み物を描くのにぴったりの季節です。手元のマグカップをモデルに、湯気の立つ一杯を描いてみましょう。
にじみの仕組みと、紙・筆の選び方
水彩色鉛筆のにじみは、紙にのせた色が水に溶け、水が広がる範囲まで一緒に運ばれることで生まれます。つまり、色は基本的に水のある場所にしか広がりません。にじみすぎるときは、色ではなく水が広がりすぎていることが多いです。
紙は、表面に凹凸のある水彩紙がおすすめです。凹凸のくぼみに水がとどまるため、広がる速さがゆるやかになり、境目もやわらかく出やすくなります。薄い画用紙は水を吸うと波打ちやすく、たまった水がムラの原因になりがちです。厚みのある水彩紙なら、はがき大でも十分に練習できます。
筆は、軸に水を入れて使う水筆ペンが手軽です。
水彩色鉛筆|50色|紙製ケース|塗り絵・水彩画
水筆ペンと水彩ブラシが付属しているので、届いたその日から、この記事のにじみ練習を始められます。水を含ませると色がやわらかく溶け、湯気の周りのぼかしも自然になじみます。水を使わずにふつうの色鉛筆としても描け、転がりにくい六角軸で下描きの線も安定します。はじめての水彩色鉛筆にちょうどよい50色です。
¥1,580(税込)
商品ページを見る湯気を描く3つの手順
湯気は「描く」より「残す」意識で取り組むと、軽やかに仕上がりやすくなります。全体の塗る順番は後半で紹介します。
-
白を残す
カップの口から上に向かって、S字にゆらぐ湯気の通り道をごく薄い鉛筆の線で決めます。湯気そのものには色を塗らず、周りの背景にだけ淡いベージュやグレーを軽く塗っておきます。
-
淡い色をにじませる
湿らせた筆で、背景の色を湯気の外側からなでるように溶かします。筆先を湯気の白い部分へ少しだけ入れると、境目がふわりとぼけて、立ちのぼる雰囲気が出ます。
-
輪郭を最小限にする
乾いたあと、湯気の根元や曲がり角など2〜3か所だけ、淡い青みのグレーで細い線を足します。全体を線で囲むと硬く見えるので、途切れ途切れにとどめるのがコツです。
水の量は3段階で使い分ける
にじみを扱いやすくするには、水の量を3段階で考えると便利です。
- 少なめ — 穂先をティッシュで押さえてから使います。線を残しながら少しだけ溶かしたい、カップの縁や取っ手に向いています。
- 中くらい — 軸を軽く押して、穂先がしっとり光る程度です。本体や背景など、広い面をなめらかにしたいときに使います。
- 多め — 軸をしっかり押して、紙の上に水が小さく盛り上がる程度です。湯気の周りなど、色を大きくぼかしたい部分に使います。
マグカップ本体と影は順番が大切
湯気を自然に見せるには、「本体の陰→机の影→湯気」の順に描くのがおすすめです。
まず光が当たる方向を決め、反対側の側面に陰の色を塗ります。カップの色に少し青や紫を重ねると、晩秋の落ち着いた空気を出しやすくなります。中くらいの水で縦方向に溶かし、光の側には紙の白を細く残すと丸みが感じられます。飲み物の表面は縁より少し濃い色にし、手前側を明るめにすると液体らしいつやを表現できます。
水彩色鉛筆72色|4.0mmソフト芯・缶ケース|水彩画・大人の塗り絵
陰に重ねる青や紫、湯気の輪郭に使う青みのグレー。晩秋らしい落ち着いた一枚は、こうした近い色の選び分けで決まります。72色あれば、カップの色に合わせた陰の色も見つけやすくなります。乾いたあとは色鉛筆として重ね描きできるので、湯気の根元に細い線を足す仕上げにも向いています。色名の印字入りで、丈夫な缶ケースに収まります。水筆ペンは付属していないため、別にご用意ください。
¥2,680(税込)
商品ページを見る次に、陰がしっかり乾いてから机の影を描きます。生乾きのうちに隣を塗ると、色が流れ込んで境目が濁りやすくなります。影はカップの底に近いほど濃く、離れるほど淡くすると、机にしっかり置かれて見えます。
まとめ:今日試すなら水滴1滴の練習から
にじみは、紙・水の量・塗る順番の3つを意識するだけで、思いどおりに近づけやすくなります。
- 紙 — 凹凸のある水彩紙で、水の広がりをゆるやかにする
- 水の量 — 少なめ・中くらい・多めを使い分け、迷ったら少なめから
- 塗る順番 — 本体の陰→机の影→湯気。湯気は塗らずに白を残す
とはいえ、いきなり一枚の絵で全部を試す必要はありません。今日試すなら、水彩紙の端に水彩色鉛筆で小さな丸を塗り、その横に水筆ペンで水滴を1滴だけ置いてみてください。筆先で水滴を丸の縁にそっとつなげ、色が水滴の中へどこまで広がるかを眺めます。水滴の大きさを変えて3回ほど繰り返すと、湯気を描くときの水の加減がつかみやすくなります。
慣れてきたら、温かい飲み物を淹れて、湯気が立っているうちにカップの形だけでも写し取ってみてください。