なぜ大人になってから絵を描きたくなるのか|3つの理由と始め方

窓辺の机に広げられた色鉛筆と描きかけのスケッチブック

「絵を描いてみようかな」と思う瞬間は、たいてい前触れなくやってきます。美術館の帰り道、あるいは文房具売り場で色鉛筆の棚の前を通ったとき。子どもの頃はあれほど自然だった行為が、大人になってから急に恋しくなるのは、なぜなのでしょうか。

ふいに訪れる「描きたい」

不思議なことに、絵を描きたくなった理由をはっきり説明できる方は、あまり多くありません。誰かに誘われたわけでもなく、目標があるわけでもない。ただ、色鉛筆の並んだ棚の前で足が止まった。ノートの余白に、なんとなく線を引いていた。そんな小さな出来事から始まっています。

理由が言葉にならないのは、それが理屈ではなく、もっと手前にある感覚から来ているからかもしれません。ここでは、その感覚を3つの角度からほどいてみます。

手を動かす時間が、少なくなっている

色鉛筆を持ち、紙の上をゆっくりと動かす手元
手を動かした時間だけ、紙の上に何かが残ります

大人の一日は、判断と処理でできています。メールを返し、予定を組み替え、誰かの意向を推し量る。頭はよく働いていても、手はキーボードの上をなぞるだけで一日が終わる。

絵を描く時間は、その逆です。目で見て、手を動かし、紙の上に結果が残る。間に何も挟まりません。色鉛筆の芯が紙の繊維に引っかかる感触、力を抜いたときにふわりと広がる色。手のひらでたしかめられるものが、そこにあります。

足りていなかったのは絵の技術ではなく、手で何かをつくる時間だったのかもしれません。

Tip 1日15分でも構いません。時間の長さより、手を動かした日が何日あるかのほうが、描く感覚を育ててくれます。

誰も採点しなくなった

子どもの頃の絵には、たいてい評価がついてきました。授業の成績、コンクールの入選、隣の席の子との比較。上手い下手がはっきりしていて、苦手だと感じたところで筆を置いた方も少なくないでしょう。

大人になってから描く絵には、それがありません。提出先もなく、締め切りもなく、点数もつきません。りんごが少し歪んでいても、影の色が思った通りにならなくても、困る人は誰もいない。

「下手なままでいい」と心から思える活動は、大人の生活のなかでそう多くありません。絵はその数少ないひとつです。むしろ、うまく描けなかった部分にこそ、その人らしさが残ります。

うまく描けたかどうかより、描いている間の静けさのほうを、あとから覚えていたりします。

世界の見え方が変わる

窓辺に置かれた一枚の葉と白い陶器のカップ
白い器にも、うすい青や灰色が差しています

描こうとすると、まず見ることになります。

葉の緑が一色ではないこと。白い器にも、うすい青や灰色が差していること。夕方の影が、思っていたより紫に近いこと。描く前は通り過ぎていたものが、描こうとした瞬間に立ち上がってきます。

これは絵に向かっている時間だけの話ではありません。一度その見方を覚えると、散歩の途中や電車の窓から見る景色までが、少しずつ変わっていきます。絵を描く楽しみの半分は、描いていない時間のほうにあるのかもしれません。

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始めるための準備は、思っているより少ない

りんごと、その隣で開かれたスケッチブックに描かれた鉛筆画
目の前にあるものは、じっと見るとどれも複雑です

必要なのは、色鉛筆と紙、それと机の上の少しの余白だけです。イーゼルも画集も、あとから欲しくなったときに揃えれば間に合います。

最初の一箱は、色数の多さより手に取りやすさで選ぶと続きやすくなります。24色ほどあれば、混色でかなりの範囲まで届きます。題材も、遠くまで探しに行かなくてかまいません。冷蔵庫のりんご、飲みかけの湯呑み、窓辺の観葉植物。目の前にあるものは、じっと見るとどれも複雑です。

色鉛筆 24色 Van Gogh 缶ケース入りセット

色鉛筆 24色 Van Gogh|油性・丸形・3.0mm・ソフト芯|缶ケース

24色という色数は、迷うには少なく、描くには十分な数です。深みのある色があらかじめ選び抜かれているので、色選びで立ち止まらずに手を動かせます。缶を開けて、今日はこの一本、と決めるところから始められる一箱です。

¥1,280(税込)

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どの描き味が自分に合うのか、まだ決めきれないという方には、種類を一度に試せるセットという選び方もあります。

色鉛筆 60色 油性と水彩の混合セット 紙製ケース入り

色鉛筆 60色|油性&水彩・丸形・3.3mm・ソフト芯|紙製ケース

油性・水彩・メタリック・マカロン・ネオンが各12色。水を含ませたときのにじみ方まで、一箱の中で比べられます。まずは自分の手に合う描き味を探してみたい方に。

¥1,780(税込)

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描きたくなった今が、ちょうどいい

絵を始めるのに、ふさわしい年齢というものはないように思います。子どもの頃に一度置いた鉛筆を、もう一度持ち直すことに、理由もいりません。「描きたくなった」という感覚そのものが、いちばん確かな理由です。

今日、机の上を少し片づけて、りんごを一つ置いてみる。それだけで、散歩道はもう始まっています。