絵を描き上げたあと、「なんだか派手すぎる」「どこか子どもっぽく見える」と感じたことはありませんか。形も構図も悪くないのに、なぜか安っぽく見えてしまう。その原因の多くは、デッサン力でも構図でもなく、彩度にあります。
彩度とは、色の鮮やかさのことです。同じ赤でも、絵の具のチューブから出したままの真っ赤は情熱的ですが、少しうるさく感じます。そこに補色や灰色をほんの少し混ぜた赤は、落ち着いた大人っぽい表情に変わります。この「1段階落とす」という小さな操作が、作品の印象を大きく左右するのです。
彩度には3つのゾーンがあります
彩度は、大きく3つのゾーンに分けて考えると扱いやすくなります。
- 高彩度ゾーン(鮮やかさ80〜100%) — 元気で目を引く色です。画面の中でいちばん見てほしい一点、たとえば主役の花びらや、光が当たっている果実の一番明るい部分に使います。
- 中彩度ゾーン(40〜80%) — 信頼感のある落ち着いた色です。絵の大部分を占めるモチーフ本体や、自然な質感を出したい部分に向いています。実は、多くの絵で最も面積を占めるべきなのがこのゾーンです。
- 低彩度ゾーン(0〜40%) — シックで奥行きのある色です。背景、影、遠景の山並みなど、主役を後ろから支える部分に使うと効果的です。
大切なのは、どこに高彩度を置くかを最初に決めておくことです。画面全部を鮮やかな色で塗り固めると、どこも目立たなくなり、全体がただうるさいだけの絵になってしまいます。
彩度は70%止めという考え方
絵に慣れた人がよく使う目安が、彩度を最大値の70%くらいに抑えるという考え方です。
たとえばレモンの黄色を描くとき、チューブから出したままの原色イエローをそのまま置くと、目に刺さるような明るさになり、周りの色となじみません。そこに、ほんのわずかに紫やグレーを混ぜて鮮やかさを7割程度に落とすと、明るさは保ったまま、目に優しく上質な黄色になります。
やり方はとても簡単です。色鉛筆なら、塗った上からグレーや補色の色鉛筆をごく軽く重ねます。水彩色鉛筆や透明水彩なら、その色の補色をごく少量、爪楊枝の先ほど混ぜます。デジタルなら彩度スライダーを少し下げるだけです。
なお、食べものや花を描くときは例外もあります。果物や野菜はもともと鮮やかなので、彩度を上げすぎると逆に作りものっぽく見えてしまいます。自然な70〜80%をキープするのが、おいしそうに見えるちょうどよい線です。
色鉛筆の場合、混ぜる手間をかける前に「少し落ち着いた近い色」を選べるかどうかで、仕上がりが変わります。色数の多いセットなら、同じ系統の中から鮮やかさの違う一本を選ぶだけで、はじめから中彩度の色で塗り始められます。
油性色鉛筆180色|3.3mmソフト芯・缶ケース|塗り絵・イラスト
鮮やかな色のすぐ隣に、少し落ち着いた近い色が並ぶ180色。混色に頼らなくても、中彩度・低彩度の色を選んで塗り分けられます。なめらかなソフト芯でグレーや補色を軽く重ねやすく、1本ずつ刻印されたカラー名と番号で、うまくいった組み合わせを控えておけるのも便利です。
¥3,798(税込)
商品を見る主役を引き立てる彩度の引き算
彩度を使いこなす一番の近道は、足すのではなく引くことです。
具体的な配分を想像してみてください。背景は低彩度のブルーグレー、モチーフ本体は自然な中彩度、そして画面の一点だけに高彩度のオレンジを置く。たったこれだけで、抑えた背景からモチーフが静かに浮かび上がり、差し色の一点に自然と視線が集まります。
ここで意識したいのは面積の比率です。低彩度と中彩度で画面の9割以上を占め、高彩度は残りのわずか数パーセントに留めます。この数パーセントが効くのは、周りが抑えられているからこそです。
この引き算の考え方は、静物でも風景でも人物でも、そのまま使えます。
今日から試せる3ステップ
理屈が分かったところで、今日の1枚で試せる手順にまとめます。
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いちばん見てほしい場所を1か所だけ決める
描き始める前に、この絵でいちばん見てほしい場所を1か所だけ決めます。花の中心でも、人物の顔でも構いません。決めた場所以外には高彩度を使わない、とルールを課すだけで画面が締まります。
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背景と影の彩度を3割ほど下げる
背景と影の彩度を、いつもより3割ほど下げて塗ります。水彩なら補色を少し混ぜる、色鉛筆ならグレーを軽く重ねる。これだけで主役が自然に前に出ます。
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2メートル離れて見直す
完成後、絵を2メートルほど離して見ます。目を細めると細部が消え、彩度の配分だけが見えてきます。そこでうるさく感じる部分があれば、次の1枚ではその部分を一段落としてみてください。
この3つを何枚か繰り返すと、塗る前の段階で「ここは抑えよう」と判断できるようになります。彩度のコントロールは感覚ではなく、練習で身につく技術です。
背景を広く一段抑えたいときは、水彩色鉛筆が頼りになります。塗った色を水でのばせば広い面も整えやすく、補色を軽く重ねてから水を含ませると、紙の上で自然に鮮やかさが落ち着きます。
水彩色鉛筆72色|4.0mmソフト芯・缶ケース|水彩画・大人の塗り絵
水なしでは色鉛筆として、水を含ませれば水彩として使える72色。背景は水でのばして低彩度に沈め、乾いたあとは色鉛筆として主役を描き込む、という彩度の作り分けが一つの缶でできます。水筆ペンは付属しないため、筆か水筆ペンを合わせてご用意ください。
¥2,680(税込)
商品を見るまとめ
彩度を1段階落とすだけで、絵は「安っぽい派手さ」から「上質な華やかさ」へと変わります。全部を派手にするのではなく、引き算で主役を際立たせる。この考え方を持つだけで、同じ画材、同じ腕前でも作品の見栄えはぐっと上がります。
まずは手元の絵1枚、背景の彩度を少し落とすところから始めてみてください。一段抑えた背景の上で、主役の色がどれだけ生き生きと見えるか、きっと驚かれると思います。
アトリエの散歩道では、落ち着いた色まで揃う多色セットや、水でのばして背景を整えられる水彩色鉛筆をご用意しています。一段抑えた色づかいのお供に、お気に入りの一本を見つけてみてください。