秋の山を見上げると、一本の木のなかに緑と黄と橙と赤が同居していて、その複雑さに見とれてしまいますよね。ところがスケッチブックを開いて色鉛筆を握った途端、どこから手をつけていいのか分からなくなる。紅葉はそういうモチーフです。赤を塗ったのに造花のような平板な赤になってしまったり、葉を一枚ずつ描き込むうちに画面が散らかってしまったり。
でも紅葉は、色鉛筆という画材がいちばん得意とする題材でもあります。薄い色を何層も重ねて、中間の色を自分でつくれるからです。ここでは色の重ね順、葉の捉え方、背景、地面という四つの段階に分けて、実際の手順とコツをご紹介します。
目次
紅葉の色は「赤」を最初に使わない——緑から赤へ重ねる
紅葉を描くときに最もやりがちなのが、いきなり赤い色鉛筆を手に取ることです。単色の赤は紙の上に均一に乗ってしまい、硬い印象になります。実際の葉は、緑が抜けきらないまま黄色に転じ、橙を経て赤へ向かう途中の姿をしています。その途中経過を、混ぜるのではなく重ねて再現します。
順番は、黄緑、黄、橙、赤、最後に深い赤茶の五層が基本です。
葉の付け根側に緑を残し、先端に向かって赤を強めると、色が変わっていく方向が自然に出ます。全面を塗りつぶさず、紙の白を一割から二割ほど残しておくと、光が透けた葉の明るさになります。
葉っぱは1枚ずつ描かない——塊と隙間で捉える
葉を一枚ずつ丁寧に追っていくと、時間がかかるわりに木が木に見えません。遠くから眺めた紅葉は、葉ではなく塊の集合として目に入っているからです。次の順で描いてみてください。
-
塊で当たりをつける
まず木全体を、大きめの塊を三つ、中くらいを四つ、小さい塊をいくつか、という具合に分けて薄く当たりをつけます。塊の大きさをあえて不揃いにすると、それだけで自然な枝ぶりに見えてきます。
-
隙間を残して色を置く
塊と塊のあいだから覗く空は、葉と同じくらいはっきりした形を持っています。この隙間を残しながら色を置いていくと、木が呼吸しているような軽さが生まれます。輪郭線は引かず、色の面の境目で形を見せてください。
-
手前の塊だけ葉を描き込む
葉の一枚一枚が分かるように描き込むのは、手前のいちばん近い塊だけで十分です。三枚から五枚、ふちの尖りを意識して描いておけば、見る人の目が奥の塊も葉として読み取ってくれます。
紅葉を引き立てる「空の色」——背景の選び方
紅葉が思ったほど鮮やかに見えないとき、原因は赤ではなく背景にあることがよくあります。赤をさらに濃くするより、周りの色を整えるほうが効きます。
赤や橙を引き立てるのは、反対の性格を持つ青系の色です。晴れた日の設定なら、薄い青を葉のあいだの隙間に軽く置くだけで、赤がぐっと前に出てきます。
曇り空にするなら、青に灰色をほんの少し重ねた鈍い色がよく合います。橙がしっとり落ち着いて、晩秋の空気になります。どちらの場合も、画面の四隅に向かって空の色を少しずつ薄くしていくと、全体が重くなりません。
落ち葉と地面——影とグラデーションで秋の空気を出す
足もとを描き加えると、絵が一気に「その場所」になります。ポイントは影の色です。
落ち葉は、手前を大きくはっきり、奥へ行くほど小さく曖昧にします。枚数の配分は手前七割、奥三割くらいの気持ちで。奥の落ち葉は形を描かず、橙と茶の小さな点を散らすだけで十分です。
地面そのものは、奥を明るく手前をやや暗くするグラデーションにすると奥行きが出ます。
用意するもの
黄緑から赤茶までの五層を重ねるので、黄・橙・赤のあいだの中間色が多いほど、色の移ろいがなめらかになります。背景の青や影の青紫も使うため、暖色と寒色の両方がそろったセットが描きやすくなります。
油性色鉛筆24色|ゴッホの名画を思わせる色|絵画・イラスト
ひまわりを思わせる黄色系と、星月夜の深い青系を中心に選んだ24色。紅葉の黄や橙と、それを引き立てる空の青を一つの缶でそろえられます。色選びに迷わず描きはじめたい方に。
¥1,280(税込)
商品を見る
油性色鉛筆180色|3.3mmソフト芯・缶ケース|塗り絵・イラスト
黄緑から赤茶までの中間色が細かくそろう180色。五層の重ねを一色ずつ丁寧に進められます。一本ごとに色名と番号が刻印されているので、気に入った重ね順を記録しておくのにも便利です。じっくり描き込みたい方に。
¥3,798(税込)
商品を見るまとめ
紅葉を描くコツは、色は重ねて移ろいをつくること、葉は塊と隙間で捉えること、背景で赤を引き立てること、そして影に色を入れることの四つです。どれも特別な道具はいりません。
最初の一枚は、木を一本だけ選んで描いてみてください。枚数を重ねるうちに、自分の手が覚えた重ね順ができてきます。
彼岸花を色鉛筆で描く——深紅は混色でつくる
暖色は近く、寒色は遠く——奥行きを色で描くコツ
コスモスを色鉛筆で描く——風に揺れる花びらのコツ
散歩の途中で色づいた葉を一枚拾って帰れば、机の上でじっくり色を確かめながら描けます。今年の秋の色を、ぜひ手元に残してみてくださいね。