紅葉を色鉛筆で描く——緑から赤へ変わる葉の重ね方

秋山の紅葉を色鉛筆で描いている手元のキービジュアル

秋の山を見上げると、一本の木のなかに緑と黄と橙と赤が同居していて、その複雑さに見とれてしまいますよね。ところがスケッチブックを開いて色鉛筆を握った途端、どこから手をつけていいのか分からなくなる。紅葉はそういうモチーフです。赤を塗ったのに造花のような平板な赤になってしまったり、葉を一枚ずつ描き込むうちに画面が散らかってしまったり。

でも紅葉は、色鉛筆という画材がいちばん得意とする題材でもあります。薄い色を何層も重ねて、中間の色を自分でつくれるからです。ここでは色の重ね順、葉の捉え方、背景、地面という四つの段階に分けて、実際の手順とコツをご紹介します。

紅葉の色は「赤」を最初に使わない——緑から赤へ重ねる

1枚の紅葉の葉を題材に、黄緑・黄・橙・赤・赤茶の順で色鉛筆を5層重ねていく過程を5段階で並べた図解
黄緑から赤茶まで五層。濃くしたいときは、筆圧ではなく層を足します。

紅葉を描くときに最もやりがちなのが、いきなり赤い色鉛筆を手に取ることです。単色の赤は紙の上に均一に乗ってしまい、硬い印象になります。実際の葉は、緑が抜けきらないまま黄色に転じ、橙を経て赤へ向かう途中の姿をしています。その途中経過を、混ぜるのではなく重ねて再現します。

順番は、黄緑、黄、橙、赤、最後に深い赤茶の五層が基本です。

Tip 一層あたりの筆圧は、芯が紙の凹凸の山だけに触れる程度。普段文字を書くときの三割ほどの力だと思ってください。濃くしたいときは筆圧を上げるのではなく、同じ色をもう一層重ねます。

葉の付け根側に緑を残し、先端に向かって赤を強めると、色が変わっていく方向が自然に出ます。全面を塗りつぶさず、紙の白を一割から二割ほど残しておくと、光が透けた葉の明るさになります。

葉っぱは1枚ずつ描かない——塊と隙間で捉える

葉を1枚ずつ描き込んで散らかった失敗例と、大小の塊と隙間で捉えた紅葉の木の成功例を左右に並べた比較図
一枚ずつ追うより、塊と隙間で捉えたほうが木らしく見えます。

葉を一枚ずつ丁寧に追っていくと、時間がかかるわりに木が木に見えません。遠くから眺めた紅葉は、葉ではなく塊の集合として目に入っているからです。次の順で描いてみてください。

  1. 塊で当たりをつける

    まず木全体を、大きめの塊を三つ、中くらいを四つ、小さい塊をいくつか、という具合に分けて薄く当たりをつけます。塊の大きさをあえて不揃いにすると、それだけで自然な枝ぶりに見えてきます。

  2. 隙間を残して色を置く

    塊と塊のあいだから覗く空は、葉と同じくらいはっきりした形を持っています。この隙間を残しながら色を置いていくと、木が呼吸しているような軽さが生まれます。輪郭線は引かず、色の面の境目で形を見せてください。

  3. 手前の塊だけ葉を描き込む

    葉の一枚一枚が分かるように描き込むのは、手前のいちばん近い塊だけで十分です。三枚から五枚、ふちの尖りを意識して描いておけば、見る人の目が奥の塊も葉として読み取ってくれます。

紅葉を引き立てる「空の色」——背景の選び方

同じ紅葉の木を、背景なし・淡い青空・灰みがかった青の曇り空の3パターンで並べ、背景がある方が赤が鮮やかに見えることを示した比較図
赤を濃くするより、背景に青を置くほうが紅葉は鮮やかに見えます。

紅葉が思ったほど鮮やかに見えないとき、原因は赤ではなく背景にあることがよくあります。赤をさらに濃くするより、周りの色を整えるほうが効きます。

赤や橙を引き立てるのは、反対の性格を持つ青系の色です。晴れた日の設定なら、薄い青を葉のあいだの隙間に軽く置くだけで、赤がぐっと前に出てきます。

Tip 空は、葉よりずっと弱い筆圧で一層か二層にとどめるのがコツです。空を濃く塗ると主役が入れ替わってしまいます。

曇り空にするなら、青に灰色をほんの少し重ねた鈍い色がよく合います。橙がしっとり落ち着いて、晩秋の空気になります。どちらの場合も、画面の四隅に向かって空の色を少しずつ薄くしていくと、全体が重くなりません。

落ち葉と地面——影とグラデーションで秋の空気を出す

地面に散った落ち葉の描き方の図解。手前の落ち葉は大きくはっきり、奥は小さな点で表し、影に青紫を下地として敷いてから茶色を重ねる手順
影は黒ではなく青紫から。その上に地面の茶色を重ねます。

足もとを描き加えると、絵が一気に「その場所」になります。ポイントは影の色です。

Note 落ち葉の影に黒やグレーを使うと、そこだけ画面から浮いてしまいます。代わりに青紫を薄く下地に敷き、その上から地面の茶色を重ねてください。影のなかにも色があるという感じが出て、全体がひとつの空気でつながります。

落ち葉は、手前を大きくはっきり、奥へ行くほど小さく曖昧にします。枚数の配分は手前七割、奥三割くらいの気持ちで。奥の落ち葉は形を描かず、橙と茶の小さな点を散らすだけで十分です。

地面そのものは、奥を明るく手前をやや暗くするグラデーションにすると奥行きが出ます。

仕上げ 落ち葉の一枚だけ紙の白を残して明るく抜いておくと、そこに陽が当たっているように見えます。
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用意するもの

黄緑から赤茶までの五層を重ねるので、黄・橙・赤のあいだの中間色が多いほど、色の移ろいがなめらかになります。背景の青や影の青紫も使うため、暖色と寒色の両方がそろったセットが描きやすくなります。

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まとめ

紅葉を描くコツは、色は重ねて移ろいをつくること、葉は塊と隙間で捉えること、背景で赤を引き立てること、そして影に色を入れることの四つです。どれも特別な道具はいりません。

最初の一枚は、木を一本だけ選んで描いてみてください。枚数を重ねるうちに、自分の手が覚えた重ね順ができてきます。

散歩の途中で色づいた葉を一枚拾って帰れば、机の上でじっくり色を確かめながら描けます。今年の秋の色を、ぜひ手元に残してみてくださいね。

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