木の板、革の小物、陶器のカップを描いても、色が違うだけで手触りは同じに見えてしまう。そんなときは、塗りつぶす前に「どんな線を残すか」を考えてみてください。
平行に近い短い線を並べ、陰影を作る方法がハッチングです。線を交差させる描き方はクロスハッチングと呼びます。鉛筆やペン、銅版画などで使われ、色鉛筆でも楽しめます。古い素描や版画でも、肌や衣服、金属の違いを線の組み合わせで伝えてきました。線の隙間に紙の白を残しながら描くので、力いっぱい塗らなくても陰影を育てられます。秋の午後、身近な小物で線の表情を試してみましょう。
線の間隔と重なりで陰影を作る
線と線の間が広いほど紙の白が見え、明るく感じられます。間隔を詰めれば暗くなり、別の向きの線を重ねると、さらに深い陰影になります。
紙の端に四角を三つ描き、同じ色、同じ弱い筆圧で試してみてください。一つ目は約2ミリ間隔、二つ目は約1ミリ間隔で線を並べます。三つ目は二つ目と同じ線に、斜めの線を重ねます。数字は練習の目安です。力を変えなくても濃さが変わる感覚を確かめます。
線の方向で木目や丸みを伝える
線の向きは、描いた面がどちらへ伸び、どう曲がっているかを伝えます。木なら木目の流れに沿わせ、少しずつ長さを変えます。節の近くでは線をゆるく曲げると、木目が回り込む感じを出せます。
丸い陶器には、器の膨らみに沿う浅い弧を並べてみてください。線を細く整え、明るい部分の間隔を広く取ると、丸みを伝えながら滑らかな面を表せます。布は折り目を境に線の向きを変えると、面の折れ曲がりが見えてきます。
芯と紙が作る線の個性を生かす
硬めの芯は細い線を保ちやすく、木目や布の織り目を描くときに役立ちます。やわらかい芯は太く濃い線を引きやすいので、革の折れ目など、深い陰影を少ない線で置きたい部分に向きます。
紙がざらついていると、線は凹凸に沿って細かく途切れます。そのかすれを生かせば、木や革の素朴な手触りを表現できます。滑らかな紙では線の輪郭が整いやすく、陶器の曲面や細かな布目を描きやすくなります。
同じ茶色で四つの素材を描いてみる
同じ茶色の色鉛筆を使うと、線だけでどれほど印象が変わるか分かります。次の順番で試してみましょう。
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枠を作る
スケッチブックに3センチ四方の枠を四つ作り、木・革・陶器・布と書き添えます。
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素材に合わせて線を並べる
弱い筆圧で線を並べます。木は一方向を基本に、木目の流れを少し曲げます。革は短い線の長さと間隔をわずかにばらつかせます。陶器は弧をそろえ、布は縦横の細い線を疎らに交差させ、織り目を思わせる面を作ります。
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暗い部分だけ重ねる
各見本の片側を暗くしてみます。木と陶器は、まず線の間隔を徐々に狭めます。革は折れ目を想定した狭い範囲に交差線を足し、布は折れた部分だけ線の密度を上げます。
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線を見比べる
線が太すぎるところや、隙間を埋めすぎたところを確かめます。描き直すなら隣に小さな見本を追加すると、違いが分かります。
用意するもの
練習に使うのは、茶色と青紫の色鉛筆、そして硬さの違う鉛筆。芯の硬さを持ち替えるだけでも、線の表情はまたひとつ広がります。
油性色鉛筆72色|3.0mmソフト芯・紙製ケース|初心者の塗り絵
茶色の線に青紫を重ねるような、二色のハッチングを試すのに十分な72色。弱い筆圧でも線がのるソフト芯で、間隔や重なりだけで濃淡をつくる練習に向いています。
¥1,580(税込)
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デッサン・スケッチ鉛筆|18点セット|紙製ケース
硬さの違う鉛筆がそろった18点セット。硬めの芯で木目や布目の細い線を、やわらかい芯で革の折れ目の太い線をと、芯による線の違いをそのまま試せます。
¥1,000(税込)
商品を見るまとめ
ハッチングは、線の間隔で濃淡を、方向で形を、重なり方で質感を伝える技法です。きれいに塗り込むことだけを目指さず、残した線が素材の表情になっているか眺めてみてください。
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一本の色鉛筆と小さな見本から、描き分けの工夫を少しずつ増やしていってくださいね。