デッサン鉛筆の硬さを使い分ける、HとBの濃淡表現

デッサン鉛筆の硬さの使い分けと、HからBへ移るにつれて濃くなる濃淡表現を紹介するアイキャッチ画像

一本の鉛筆で描き進めていくと、どこかで手が止まりませんか。影をもっと濃くしたいのに、力を入れても芯が滑るだけで黒くならない。反対に、薄く下描きしたつもりの線が最後まで残ってしまう。

描く技術の問題に見えて、じつは鉛筆の硬さを一種類で通していることが原因かもしれません。デッサン鉛筆は、硬さを変えるだけで出せる濃さの幅が大きく変わります。今日はHとBの意味から、一枚の絵の中での使い分けまでを整理してご紹介します。

鉛筆の硬さの基本——HとBが示すもの

鉛筆の硬さの階段を示す図解。6H・4H・2H・H・F・HB・B・2B・4B・6Bの鉛筆を薄い順に並べ、その真下に各硬さで塗った濃度サンプルの帯を配置し、左端に「H=硬い・薄い」右端に「B=柔らかい・濃い」の日本語ラベルを添えた比較図
Hに近いほど硬く薄く、Bに近いほど柔らかく濃くなる

鉛筆の軸に印字されたHとBは、芯の性質を表す記号です。HはHard、つまり硬いという意味で、芯が硬く紙に乗る粉が少ないため、線は薄く仕上がります。BはBlack、黒いという意味で、芯が柔らかく粉が多く乗るため濃くなります。HBはその中間で、日常的に文字を書くときの標準的な濃さです。H寄りで少し硬いFという表記を見かけることもあります。

数字はその傾向の強さを示します。2H、4H、6Hと数が増えるほど硬く薄くなり、2B、4B、6Bと増えるほど柔らかく濃くなります。薄いほうから並べると、6H、4H、2H、H、F、HB、B、2B、4B、6Bという階段になります。

硬い芯は細く鋭い線が長く保てる代わりに、強く押しても黒くはならず、紙に溝ができてしまいます。柔らかい芯は軽い力で深い黒が出る代わりに、先が丸まりやすく、粉が手や紙にこすれて広がります。

Tip HとBは、濃さの違いというより性格の違いだと考えるとつかみやすくなります。H系は細く鋭い線が得意、B系は軽い力で深い黒を出すのが得意です。

下書きはH、影はB——使い分けの基本

同じ球体を二段階で描いた作例。上段は2Hの薄い線で輪郭を取った下描き状態と、それを練り消しで押さえてほとんど消えた状態を並べ、下段は2Bで陰の稜線と落ち影を濃く入れた状態を示し、「下描き=H系・消しやすい」「影=B系・軽い力で濃く」の日本語ラベルを添えた図
下描きは消しやすいH系、影は軽い力で濃く出るB系

使い分けの出発点は単純です。下描きはH系の薄い鉛筆で、影や暗い部分はB系の濃い鉛筆で描きます。

下描きにH系を選ぶ理由は、消しやすさです。H系の線は紙に乗る粉が少ないので、練り消しで押さえればほとんど痕跡を残さず消えます。形を探る段階では何度も線を引き直しますから、この消えやすさが助けになります。2HかHあたりで、鉛筆の重さだけで引くくらいの力加減がちょうどよいです。

Note H系の鉛筆を強く押し込むと紙が凹み、その溝は消しゴムでは戻りません。下描きの線は、なでるくらいの軽さで引いてください。

影をB系で描く理由は、濃さの到達点が違うからです。2Bや4Bは軽くなでるだけで深い暗さが出るので、紙を痛めずに一番暗いところを締められます。H系で同じ暗さを出そうとすると何度も重ねることになり、紙の表面が潰れて光ってしまいます。暗くしたいときは力を込めるのではなく、柔らかい鉛筆に持ち替える。これが一番の近道です。

一枚の絵で硬さを組み合わせる

りんごと木の実のデッサンを四つの工程で並べた図解。①2Hで輪郭とヘタのくぼみを薄く取る ②HBで芯を寝かせて中間調を面で塗る ③2Bから4Bで陰の稜線と落ち影の根元を締める ④練り消しで光の当たる面を明るく抜く、という流れに日本語の工程ラベルを添えた作例
硬い鉛筆から柔らかい鉛筆へ、四つの工程で進める

りんごや木の実のような身近な静物で試してみましょう。順番は、硬い鉛筆から柔らかい鉛筆へ。これが原則です。

はじめに2HかHで、全体の位置と輪郭を薄く取ります。りんごなら丸みの当たりとヘタのくぼみ、木の実なら殻の向きくらいまでです。この段階の線は完成図ではなく目印なので、迷ったら気軽に引き直してください。

次にHBで中間調を置きます。光が当たる面から影へ移る、なだらかな部分です。ここを担うのがHBで、薄すぎず濃すぎない中間の広がりが絵の大半を占めます。芯を寝かせて面で塗ると、線の跡が残りません。

最後に2Bから4Bで、一番暗いところに入ります。光が当たらない側の陰の稜線と、机に落ちる影の根元です。落ちる影は接している場所がいちばん濃く、離れるほど薄くなります。塗り終えたら練り消しをそっと押し当てて、光の当たる面を明るく抜きます。

Note この順序が大切なのは、柔らかい芯の粉が乗った上には硬い芯が乗らないからです。先に4Bで塗った場所をHでなぞっても、粉を押し広げて溝を作るだけで終わってしまいます。

セットの活用と、削り方・保管のこと

デッサン鉛筆のお手入れを示す図解。左にカッターで木部を1.5センチ削り芯を5〜8ミリ長く出した鉛筆の断面イラスト、中央に紙やすりで芯先を斜めに平らにする様子と、立てて引いた細い線・寝かせて塗った広い面の比較、右にケースへ横向きに収めた鉛筆と「芯を下に向けて立てない」の注意ラベルを配置した日本語図解
芯を長めに出して削り、ケースには横向きに収める

硬さを一本ずつ買い足していくやり方もありますが、幅を持たせたいなら複数本まとまったセットが手軽です。まずは2H、HB、2B、4Bの四本あれば、下描きから中間調、暗部までひと通り足ります。表現を広げたくなったら4Hと6Bを加えて、薄いほうと濃いほうの両端を伸ばしていきます。

デッサン・スケッチ鉛筆|18点セット|紙製ケース の商品画像

デッサン・スケッチ鉛筆|18点セット|紙製ケース

硬いH系から濃いB系まで、14段階の硬度のスケッチ鉛筆14本に、消しゴム・練り消し・ぼかしツールが加わった18点セットです。この記事で使う2H・HB・2B・4Bがそろい、下描きから暗部までを一つのケースで描き分けられます。軽い紙製ケースなので、外へ持ち出してのスケッチにも。

¥1,000(税込)

商品ページを見る

削り方は、鉛筆削りよりもカッターがおすすめです。木の部分を1.5センチほど削り下げ、芯を5ミリから8ミリ長く出しておくと、立てて細い線を引くことも、寝かせて広い面を塗ることも同じ一本でできます。芯の先を紙やすりに当てて斜めの平らな面を作っておくと、ハッチングの線の太さがそろいます。

保管は、芯を下に向けて立てないことだけ気をつけてください。落としたり強くぶつけたりすると、外からは分からないまま芯が木の中で折れて、削るたびにぽろぽろ落ちるようになります。ケースや布の巻きに横向きで入れておくのが安心です。

Tip B系の鉛筆は粉が出やすいので、軸や手を時々拭くと画面が汚れずに済みます。

まとめ

H系は硬く薄く、B系は柔らかく濃い。数字はその傾向の強さを示します。下描きはH、中間調はHB、影はBと役割を分け、硬い鉛筆から柔らかい鉛筆へ進む。この順序を守るだけで、出せる濃淡の幅は驚くほど広がります。

  • 下描き — 2HかHで、鉛筆の重さだけで軽く引く
  • 中間調 — HBの芯を寝かせて、面で広く置く
  • 暗部 — 2Bから4Bに持ち替えて、陰と落ち影の根元を締める
  • 順番 — 硬い鉛筆から柔らかい鉛筆へ。逆には戻らない

濃くしたいときに力を込めるのをやめて、鉛筆を持ち替えてみてください。同じモチーフを描いても、紙の上に出てくる黒の深さが変わります。手元に何本かの硬さがそろっていれば、その日描きたいものに合わせて選べるようになります。

・・・

アトリエの散歩道では、硬さの違うデッサン鉛筆をまとめてそろえられるセットをご紹介しています。一本ずつ持ち替えて描く楽しさを、ぜひ手元で確かめてみてください。

Instagram アトリエの散歩道では、色鉛筆やそのほかの画材にまつわる話を、Instagramでも発信しています。 @atelier_promenade