ニットと布の質感を色鉛筆で描く——編み目と起毛の表現

木製の机に生成りのケーブル編みセーターと色鉛筆、描きかけのニットの絵が載ったスケッチブックが並ぶ様子

セーターやマフラーを描こうとすると、もこもこ感やざらざら感が出ず、のっぺりしたベタ塗りになってしまうことはありませんか。ニットや布は、色鉛筆画の中でも難しいと感じる方が多いモチーフです。

でも、質感が出ないのはセンスの問題ではありません。いくつかのコツを知るだけで、手触りまで伝わる絵に近づけます。

布の質感は「線の向き」と「塗り方」で決まる

指で布の表面をなぞって繊維の向きを確かめる手元と、芯を立てて描いた細い線・芯を寝かせて塗った面を並べて比べたスケッチブックの見本
指で繊維の流れを確かめてから、芯を立てるか寝かせるかを決めます。

布らしさを左右するのは、「線の向き」と「塗り方」の2つです。ここがちぐはぐだと、色選びがよくても布は硬い板のように見えてしまいます。

まず線の向きです。布は糸の集まりなので、繊維の流れに沿ってストロークを重ねると、自然と質感が生まれます。マフラーなら縦方向に、ひざ掛けならたるみのカーブに沿って線を走らせます。

Tip 描く前に指で布をなぞり、糸の流れを確かめておくと迷いません。

次に塗り方です。同じ色鉛筆でも、芯を立てて線で描くか、寝かせて面で塗るかで印象は大きく変わります。くっきりした編み目は立てた芯で、ふんわりした毛羽は寝かせた芯で描き分けます。

編み目を描く——小さなV字をリズムよく重ねる

薄いガイド線の上に小さなV字の編み目を、薄い色・中間色・影色の順に重ねていく生成りのニットの描画過程を3段階で並べた見本
薄い色、中間色、影色の順に、小さなV字を重ねていきます。

ニットの表面をよく見ると、小さなV字がつながった列が縦に並んでいます。この形をリズムよく繰り返すのが、編み目表現の近道です。

まずは手元のセーターを顔に近づけて観察してみてください。V字1つの幅や、列の間にできる影の位置がよく分かります。観察できたら、次の手順で描きます。

  1. 縦のガイド線を引く

    塗る色に近い薄い色鉛筆で、編み目の列に沿った縦のガイド線をごく薄く引きます。

  2. 薄い色でV字を並べる

    ガイド線の間に、いちばん薄い色で小さなV字を並べます。筆圧は10段階で2〜3が目安です。

  3. 中間色でふくらみをつける

    中間色でV字の片側をなぞり、ふくらみをつけます。

  4. 影色を境目にだけ入れる

    影色を列の境目とV字の間にだけ細く入れます。

色は「薄い色→中間色→影色」の順に重ねるのがポイントです。生成りのニットなら、クリーム→薄いベージュ→グレーがかった茶色が目安です。

Note 濃い色を先に塗ると明るさを戻せないので、慎重に進めましょう。V字はすべてを描き込まなくてかまいません。光が当たる部分はあいまいにし、影側だけしっかり描くと立体感が出ます。

起毛感を出す——輪郭をやわらかく、芯を寝かせて

芯を寝かせた色鉛筆で軽く撫でるように塗ったモヘアのマフラーの絵。輪郭が線で囲まれずやわらかくぼかされ、光が当たる縁に白い毛羽が少しだけ足されている
輪郭は線で囲まず、光の当たる縁に毛羽を数本だけ足します。

モヘアのような起毛素材は、編み目よりも「ふわっとした空気感」が主役です。芯を寝かせ、軽い筆圧で撫でるように塗ります。

筆圧は10段階で1〜2程度が目安です。小さな円を描きながら色を重ねていきます。紙の凹凸に白い点が残るくらいがちょうどよく、それが毛羽立ちの下地になります。

起毛した布の縁を線で囲むと、一気に硬い印象になります。縁は短い線を外側へ少しはみ出させるように描き、背景との境目をぼかしてください。

仕上げ 白や明るい黄みの色鉛筆で、光が当たる縁に短い毛を数本だけ足します。足しすぎると白っぽくなるので、少し物足りないくらいで止めましょう。

描き分けのコツ——ウール・コットン・デニムの違い

えんじ色のウールの編み目と起毛、白いコットンシャツのやわらかなシワ、藍色のデニムの斜めの綾目と白い糸の混ざりを、色鉛筆で描き分けて並べたスケッチブックの見本
ウール、コットン、デニム。素材ごとに見せる場所が変わります。

同じ布でも、素材によって見せ方は変わります。配色例と一緒に見ていきましょう。

ウール

編み目の凹凸と起毛の両方を見せます。V字の編み目を描いたら、芯を寝かせて薄く色をかけ、縁に毛羽を足します。配色例は赤・えんじ・こげ茶の3色です。

コットン

平織りの細かい目とやわらかなシワが特徴です。目は細い縦横の線を軽く重ねる程度にとどめ、シワの影でふくらみを出します。白いシャツなら、薄いグレーと水色の2色で影をつけると清潔感が出ます。

デニム

斜めの綾目と白い糸の混ざりがポイントです。左下から右上へ細い斜線を規則的に重ね、ところどころ塗り残して白い糸を表します。配色例は薄いグレー・青・藍色の3色です。

Tip 本番の前に、紙の端で試し塗りをしましょう。2〜3cm角の四角を並べ、重ね順や筆圧を変えて比べると、自分に合った描き方が見つかります。
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用意するもの

生成りのクリームやベージュ、ウールのえんじ、デニムの藍色。布の質感は、近い色どうしを何層も重ねて生まれます。似た色が細かくそろっているほど、重ね順の工夫がしやすくなります。

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まとめ

ニットや布の質感は、「線の向き」と「塗り方」を意識するだけで大きく変わります。最後に心得をおさらいしましょう。

  • 線は繊維の流れに沿って重ねます
  • 色は薄い色→中間色→影色の順に、軽い筆圧から重ねます
  • 起毛は輪郭を線で囲まず、明るい色の毛羽は最後に少しだけ足します

そして何より、上達の近道は実物を手に取り、いちばん近くで見ることです。お気に入りのセーターを机に置き、編み目や光の当たり方をじっくり眺めてみてください。

見えるものが増えるほど、あなたの絵は布らしくなっていきます。

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