秋の空と雲を色鉛筆で描く——いわし雲の表現

青く高い秋の空といわし雲を見上げながらスケッチブックに色鉛筆で描く風景

9月に入って、空の様子が変わってきましたね。さっきまで夏だったはずなのに、ふと見上げると青がぐっと深くなっていて、細かい雲が魚のうろこのように並んでいる。あの空を描きとめておきたいと思ったことはありませんか。

秋の空は、実は色鉛筆ととても相性のよいモチーフです。乾く時間を待つ必要がなく、薄い色を少しずつ重ねていけば、あの澄んだ青と雲の白さが自然に出てきます。今日は観察のポイントから塗る順番まで、順を追ってご紹介します。

秋の空はなぜ「高い」のか——観察のポイント

夏の入道雲と秋のいわし雲の高さの違いを示した図解。入道雲は地面近くから立ち上がり、いわし雲ははるか上空に広がる
同じ空でも、雲のある高さがまるで違う

秋の空が高く感じられるのは、雲のできる高さが違うからです。夏の入道雲が地面近くからもくもくと立ち上がるのに対して、秋のいわし雲は上空5000メートルより高いところに広がります。目線の先ではなく、はるか頭上に雲があるので、空全体が遠く感じられるのです。

描く前に見ておきたいのは3つです。ひとつめは青の濃さの違いで、真上の空は濃く、地平線に近づくほど白っぽくなります。ふたつめは雲の大きさで、手前ほど大きく、遠ざかるほど小さく密になります。みっつめは光の向きで、太陽側の雲は上面が白く、反対側は下面に影が出ます。

Tip 観察に迷ったら、目を細めて空を見てみてください。細かい情報が消えて、明るい部分と暗い部分の大きなかたまりだけが残ります。そのかたまりの形が、そのまま下描きになります。

青空のグラデーション——空色を塗る順番

薄い水色から順に青を重ねる3段階の塗り順を示した図解。紙全体、上半分、いちばん上の帯の順に色が濃くなる
3層重ねた青は、1回で塗った青より深くなる

空は濃い青からではなく、薄い色から入るのが基本です。塗る範囲を少しずつ狭めながら、3つの層に分けて重ねていきます。

  1. 1層目——薄い水色を紙全体へ

    いちばん薄い水色を、画面のすみずみまでムラなく1層のせます。ここで濃さを決めようとせず、うっすら色がつく程度で止めてください。

  2. 2層目——画面の上半分へ青を

    青を画面の上半分だけに重ねます。下半分は1層目の水色のまま残しておくと、地平線に近づくほど白っぽくなる空の見え方に近づきます。

  3. 3層目——いちばん上の帯だけに群青や藍色を

    画面のいちばん上の帯にだけ、群青や藍色を重ねます。真上の空にあたる部分です。ここまでで青の濃淡が3段階できあがります。

大切なのは芯の寝かせ方です。鉛筆を立てると線の筋が残るので、後ろのほうを持って紙に対して30度くらいまで寝かせます。芯の側面を使い、直径1センチほどの小さな円をぐるぐる描くように動かすと、筋が出ずに均一な面になります。筆圧は10段階の2か3、紙の目にうっすら色がのる程度で十分です。

1層で決めようとせず、同じ薄さで3回重ねてください。3回重ねた青は、1回で強く塗った青よりも深く、透明感のある色になります。層と層の境目が気になるときは、薄いほうの色をもう一度その境目にかけると自然につながります。

水色、青、群青、藍。空のグラデーションは、こうした近い青をどれだけ細かく刻めるかで表情が決まります。手持ちの色数が、そのまま階調の細かさになる場面です。

Seascape油性色鉛筆24色|海を描くソフト芯|風景画・イラスト の商品画像

Seascape油性色鉛筆24色|海を描くソフト芯|風景画・イラスト

海と空を描くために組まれた24色で、薄い水色から青、群青、藍までの青系が厚く入っています。3層に重ねる空の塗り順を、混色に頼らず1本ずつ選んで進められます。ソフト芯なので、寝かせた芯で軽く円を描く1層目にも向いています。

¥1,280(税込)

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雲の白さを残すコツ——塗り残しと消しゴム

塗り残しで白を残した雲と、白い色鉛筆で塗った雲を並べた比較図。塗り残した雲のほうが明るく見える
白は塗って作るのではなく、紙の白を残して作る

雲の白は、白い色鉛筆では出せません。いちばん明るい白は最初から紙が持っているので、そこを塗らずに残すことが白の表現になります。

そのために、空を塗る前に雲の形を薄い鉛筆でごく軽く囲っておきます。塗るときはその線の手前で手を止め、雲のふちに沿って外側から内側へ動かすと、輪郭がきれいに出ます。

Tip それでも青がはみ出したら、練り消しゴムの先を細くとがらせて、こすらずに押して離すを繰り返してください。押し当てるだけで色が吸い取られ、紙を傷めずに白が戻ります。

雲にも影はあります。ただし灰色で塗ると濁ってしまうので、ごく薄い水色か薄紫を雲の下側だけに1回のせてください。白い部分を全体の7割ほど残しておくと、明るさが保たれます。

いわし雲・うろこ雲の描き方——群れ雲の表現

いわし雲を帯・粒・影の3段階で描く手順を示した図解。帯の流れを決め、粒を置き、下側に影を入れる流れ
一粒ずつではなく、帯・粒・影の順に進める

いわし雲は粒の集まりですが、一粒ずつ描いていくとバラバラになります。3つの段階で進めるとまとまります。

  1. 第1段階——群れ全体を1本の帯としてとらえる

    雲の群れ全体を1本の帯としてとらえ、その流れを薄い線でざっくり決めます。画面を斜めに横切る帯にすると、空の広がりが出ます。

  2. 第2段階——帯の中に粒を置いていく

    手前の粒は大きめで間隔を広く、奥へいくほど小さく詰めていきます。大きさは意識してばらつかせてください。同じ大きさが並ぶと、模様のように見えてしまいます。

  3. 第3段階——粒の下側にだけ影を置く

    すべての粒の下側だけに、薄い水色か薄紫を軽く1回。上側は紙の白のまま残します。これで粒がふくらんで見えてきます。

Note 粒は全部描き込まず、7割ほどで手を止めてください。描き残した部分が、空気の抜けたやわらかい空になります。

粒の影に使う薄い水色や薄紫は、空の色と半歩ずれた程度の近い色です。この半歩の差を何段階も持っているセットがあると、影を置くたびに色を探し直さずにすみます。

油性色鉛筆180色|3.3mmソフト芯・缶ケース|塗り絵・イラスト の商品画像

油性色鉛筆180色|3.3mmソフト芯・缶ケース|塗り絵・イラスト

180色そろうと、青と紫のあいだの中間色が細かく刻まれます。雲の影に置く薄紫、真上の空の群青、地平線近くの淡い水色を、それぞれ別の1本として選べるようになります。空のように近い色を並べて使うモチーフでは、色数がそのまま表現の幅になります。

¥3,798(税込)

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まとめ

秋の空を描くときにいちばん効くのは、うまく塗る技術よりも、空をしばらく眺める時間かもしれません。青の濃さは真上と地平線で違い、雲は遠くほど小さくなる。この2つを知っているだけで、同じ色鉛筆でも仕上がりが変わってきます。

手順としては、薄い水色から3層に重ねて空をつくり、雲は塗り残しで白を守り、いわし雲は帯・粒・影の順に進める。数値でいえば、この4つが手がかりになります。

  • 芯の角度 — 紙に対して30度に寝かせ、小さな円を描くように動かす
  • 筆圧 — 10段階の2か3。紙の目にうっすら色がのる程度
  • 重ねる回数 — 同じ薄さで3回。1層で決めようとしない
  • 止めどころ — 雲の白は7割残す。粒も7割で手を止める

いわし雲が出るのは、秋のうちの短い期間だけです。次に空を見上げたときに気に入った雲があったら、写真を1枚撮っておいてください。その日の夜にスケッチブックを開けば、その空はもう一度描くことができます。

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晴れた日の帰り道に、一度だけ足を止めて上を見てみてください。描きたい空は、たいてい思いがけないときに現れます。

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