秋の七草を色鉛筆で——ススキと桔梗をやさしく描く

ススキの穂と紫の桔梗を色鉛筆で描いたスケッチブックと、秋色の色鉛筆が並ぶ机の上

朝晩の空気がふっと軽くなって、夕方の光が少しだけ長く伸びるようになりました。ひまわりや朝顔を描き尽くして、そろそろ違うモチーフに手を伸ばしたくなる時期ですよね。

そんなときにおすすめしたいのが、秋の草花です。夏の花が「見て」と言わんばかりに鮮やかなのに対して、秋の草花は色数が少なく、輪郭もどこか控えめです。派手さがないぶん、描くほうの腕の見せどころが多い題材でもあります。今日はその代表格である秋の七草を題材に、色鉛筆で秋らしい一枚を仕上げるコツを見ていきましょう。

秋の七草ってどんな草花?

秋の七草は、萩、尾花、葛、撫子、女郎花、藤袴、桔梗の7つです。尾花というのはススキのこと。春の七草が食べるためのものだったのに対して、秋の七草は眺めて楽しむための草花として親しまれてきました。

秋の七草7種を並べた図鑑風のイラスト。萩・ススキ・葛・撫子・女郎花・藤袴・桔梗それぞれに名前を添えた図
秋の七草。名前を覚えるより、形と色の印象をつかむところから

とはいえ、7つすべてを覚える必要はまったくありません。実際に描いてみると分かるのですが、画面にススキと桔梗が入っているだけで、絵はぐっと秋の顔になります。ススキが風景の空気を作り、桔梗が色の芯を作ってくれるからです。

Tip モチーフ探しも気負わなくて大丈夫です。ススキは河川敷や線路沿い、少し広い空き地なら9月を過ぎるとあちこちで見つかります。桔梗と撫子は花屋さんの切り花コーナーに並びますし、女郎花も秋の花束によく入っています。山に分け入らなくても、七草のうち半分は手の届くところにあると考えてください。

ススキの穂を描く——ふわふわ感のコツ

ススキでいちばん多い失敗は、穂の毛を1本ずつ丁寧に描いてしまうことです。細い線を几帳面に並べるほど、あのふわふわした感じは遠ざかっていきます。

ススキの穂の描き方を3段階で示した図。束の輪郭、方向を揃えた短い線、白とクリームで毛先をほぐす手順
1本ずつではなく、束として。向きを揃えるのがふわふわ感の入口
  1. 束の輪郭を、線ではなく面で取る

    穂を毛の集まりではなく、ひとつの束として捉えます。まず穂全体のシルエットを、細長い雲のようなふんわりした形として薄く取ってください。この段階では線ではなく面です。

  2. 向きを揃えた短い線を入れる

    面の中に短い線を入れていきます。ススキの毛は根元から先へ、扇が開くように放射状に伸びています。この向きを揃えるだけで、線の数が少なくても穂に見えてきます。線は端まで引ききらず、途中で止めるほうが自然です。

  3. 白・クリーム・薄茶の3色で仕上げる

    薄茶を全体の芯として置き、クリーム色を毛先のほうへ軽く重ね、いちばん外側は塗らずに紙の白を残します。この3色が混ざり合うと、光を透かしたやわらかさが出ます。

Tip 穂の輪郭をはっきり閉じないことが、ふわふわ感の最後の鍵です。ぐるりと線で囲ってしまうと、そこで空気が止まります。毛先は紙の白に溶かしたまま、あえて描き終えないでおいてください。

桔梗と女郎花を描く——花びらの重なり

桔梗は、5枚の花びらが星形に開く分かりやすい形をしています。だからこそ、輪郭を先に決めてしまうのが正解です。

桔梗の5弁の花を描く手順図と、女郎花の小花を点で表す描き方を並べた図解
桔梗は骨組みから、女郎花は点の密度で

先に薄い鉛筆で五角形の当たりを取り、その頂点に向かって花びらの先をとがらせます。この骨組みができてから内側に色を置いていくと、形が崩れません。花びらの中心から先端に向かって走る筋を意識して、色も同じ方向になでるように置きます。

花びらが重なる部分は、線で区切らないでください。重なっている側の花びらに、同じ紫をもう1層だけ薄く重ねます。濃さの差だけで前後が生まれますから、輪郭線を足すよりずっと自然に奥行きが出ます。

女郎花は逆に、1輪ずつ描こうとしないことです。黄色い小花が霞のように集まった花なので、全体をやわらかい三角形の塊として薄い黄色で塗り、その上から濃い黄色や黄土色の小さな点をリズムよく散らします。点の密度を中心ほど高く、外側ほどまばらにすると、ふんわりした立体感が生まれます。

この当たり取りには、色鉛筆よりも鉛筆のほうが向いています。ごく薄い線で形を探れて、色を置く前に軽く消しておけるからです。

スケッチ鉛筆18点セット|基本画材入り|初心者のデッサン練習 の商品画像

スケッチ鉛筆18点セット|基本画材入り|初心者のデッサン練習

濃さの違う鉛筆がひととおり揃うので、いちばん薄い1本で当たりを取り、少し濃い1本で花びらの向きを決める、という使い分けができます。草花のように形の繊細なモチーフでは、下描きを軽い線で済ませられることがそのまま仕上がりに効いてきます。

¥1,000(税込)

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秋の色を作る——くすみカラーで深みを出す

秋の絵がどうにも秋らしくならないとき、原因はたいてい色が鮮やかすぎることにあります。缶から出したままの緑、そのままの紫では、どうしても夏の顔になってしまうのです。

くすみカラーの作り方の見本図。左に原色、右に灰色や黄土を重ねた秋色を並べた比較チャート
原色の上に、グレーか茶をごく薄く1層。それだけで秋の色になる

秋の色は、原色を一段落ち着かせたところにあります。作り方は簡単で、鮮やかな色の上にグレーか茶色をごく薄く1層かぶせるだけです。

ススキの葉なら、青緑を敷いてから黄土色を軽く重ねます。これだけで、日に焼けて乾きはじめた葉の色になります。桔梗の紫は、青紫を置いたあとに薄いグレーをそっと重ねてください。鮮やかさが少し引いて、あの深く沈んだ紫に近づきます。草の枯れかけた部分には、緑の上に薄い赤茶を重ねると自然です。

Note このとき順番だけは守ってください。薄い色から濃い色へ、明るい色から暗い色へ。先にグレーを置いてしまうと、上に何を乗せても濁ったままになります。くすませる色は最後に、しかも1層だけ。物足りないくらいで手を止めるほうが、上品な秋色に落ち着きます。

青緑と黄土、青紫と薄いグレー。こうした組み合わせを探す作業では、手元の色数がそのまま選択肢の広さになります。中間色が細かく刻まれたセットなら、原色から半歩ずらした色をそのまま選べるので、重ねる回数も少なくて済みます。

油性色鉛筆180色|3.3mmソフト芯・缶ケース|塗り絵・イラスト の商品画像

油性色鉛筆180色|3.3mmソフト芯・缶ケース|塗り絵・イラスト

秋の草花は、鮮やかな色よりも中間色でできています。180色そろうと、黄土・赤茶・グレーがかった緑や紫といった落ち着いた色を、最初から1本で選べます。3.3mmのソフト芯は軽い筆圧でも色がのるので、くすませる最後の1層をごく薄く置くのにも向いています。

¥3,798(税込)

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まとめ

秋の草花を描くときに覚えておきたいのは、次の3つです。

  • ススキ — 1本ずつではなく束として捉え、毛の向きを揃える
  • 花びら — 輪郭から入り、重なりは線ではなく濃さの差で表す
  • 秋の色 — 原色の上に、グレーか茶色を最後に薄く1層だけ重ねる

この3つを押さえるだけで、いつものスケッチブックが秋の空気をまといはじめます。夏のあいだに描きためた鮮やかな一枚と並べてみると、季節が変わったことがはっきり分かるはずです。

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散歩のついでにススキを一本持ち帰って、まずは30分だけ描いてみてください。秋の草花は、思っているより静かに通り過ぎていきます。

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