風景を描いてみたら、遠くの山も手前の木も同じ濃さ、同じ鮮やかさで並んでしまった。そんなふうに平たい絵になって、がっかりしたことはありませんか。
原因は絵の腕前ではありません。遠くと手前のあいだにある「空気の層」を描いていないことにあります。遠くと手前で色の濃さを変えるだけで、絵にはぐっと奥行きが出ます。今回は秋の霞んだ山と朝もやを題材に、初心者の方でもそのまま試せる手順をご紹介します。
遠くのものほど薄く青く見える——空気遠近法とは
空気遠近法とは、遠くのものほど薄く、青く、コントラストが弱く見える現象のことです。同じ緑の木でも、目の前にあれば濃く鮮やかに見えますよね。ところが数キロ先の山に生えている木だと、あいだにある空気の層や細かな水蒸気が光を散らします。そのため色は薄まって青みを帯び、輪郭もぼやけて見えるのです。
つまり遠近感を出すには、「線」ではなく「色と濃さ」で距離を描くことが大切です。輪郭線をていねいに引くよりも、遠くのものを薄く塗るほうが、ずっと自然に奥行きが生まれます。
近景・中景・遠景の3つの層に分けて描く
描き始める前に、画面を3つの層に分けて考えましょう。
近景:紅葉した木や草むら
画面のいちばん手前にあるものです。赤・橙・黄などの暖色を使い、強めの筆圧で紙の目が埋まるくらいまで塗り込みます。輪郭もくっきりさせてください。
中景:少し離れた林や丘
紅葉の色に茶色や灰色を少し混ぜて、近景よりひと段階落ち着いた色にします。筆圧は中くらいにして、輪郭はやや柔らかく描きます。
遠景:空に近い山並み
薄い青、青紫、灰色を中心に使い、紙の白が透けるくらいのごく弱い筆圧で止めます。輪郭は線で囲まず、色の境目をぼかしてください。
色とコントラストで奥行きを出す——3つの変化
遠くになるほど、色には次の3つの変化が起きます。
- 彩度が下がる:鮮やかな赤い紅葉も、遠くでは赤茶色や灰みがかった色に見えます。
- 青みが増す:遠景はもとの色が何色でも、青を1〜2割ほど重ねるイメージで塗ってみてください。
- 明暗の差(コントラスト)が小さくなる:近景では影を濃く入れますが、遠景では明るい部分と暗い部分の差をほとんどつけません。
濃さの目安は、近景を10とすると中景が6〜7、遠景が3〜4です。
秋の風景で実際に描く手順(霞んだ山と朝もや)
それでは、朝もやの中の山を実際に描いてみましょう。
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下描きは軽く、遠景から
薄い色の色鉛筆で、山の稜線、中景の林、手前の木の位置をごく軽く描きます。遠景から順に位置を決めると、重なり方がわかりやすくなります。
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遠景を薄い青紫で
山並みを弱い筆圧で塗ります。山のすそは塗らずに紙の白を残してください。この白がそのまま朝もやになります。
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中景を中間の濃さで
林をくすんだ橙や黄土色で塗ります。下のほうは白を残してもやに溶け込ませ、上から薄い青をひと重ねします。
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近景を濃く鮮やかに仕上げる
手前の紅葉を赤や橙でしっかり塗り込みます。影の部分には濃い茶色を入れ、明暗の差をはっきりつけましょう。
用意するもの
近景の赤・橙・黄、中景の茶色や黄土色、遠景の薄い青や青紫、灰色。鮮やかな色と落ち着いた色の両方がそろっていると、層ごとの色を選びやすくなります。
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近景の鮮やかな紅葉色から、遠景のくすんだ青や灰色まで、層ごとに色を選び分けやすい180色。「遠くほど彩度を下げる」という変化を、色の入れ替えで素直に表せます。
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商品を見るまとめ
- 遠近感は「線」ではなく「色と濃さ」で描きます
- 画面を近景・中景・遠景の3層に分け、層ごとに色を決めてから塗り始めます
- 遠くほど彩度を下げ、青みを足し、明暗差を小さくします(濃さの目安は近景10、中景6〜7、遠景3〜4)
- 朝もやは紙の白を残して表現し、遠くから手前の順に描きます
まずは窓から見える遠くの景色を、3つの層に分けて観察するところから始めてみてください。
暖色は近く、寒色は遠く——奥行きを色で描くコツ
秋の空と雲を色鉛筆で描く——いわし雲の表現
紅葉を色鉛筆で描く——緑から赤へ変わる葉の重ね方
遠くの山をひと塗り薄くするだけで、紙の上に秋の澄んだ空気が広がります。