秋の風景画を描く——空気遠近法で奥行きを出すコツ

秋の霞んだ山並みと、手前の紅葉した木立を色鉛筆で描いた作例

風景を描いてみたら、遠くの山も手前の木も同じ濃さ、同じ鮮やかさで並んでしまった。そんなふうに平たい絵になって、がっかりしたことはありませんか。

原因は絵の腕前ではありません。遠くと手前のあいだにある「空気の層」を描いていないことにあります。遠くと手前で色の濃さを変えるだけで、絵にはぐっと奥行きが出ます。今回は秋の霞んだ山と朝もやを題材に、初心者の方でもそのまま試せる手順をご紹介します。

遠くのものほど薄く青く見える——空気遠近法とは

空気遠近法の原理を示した図解。手前の木は濃く鮮やか、遠くの山ほど薄く青くなる様子を矢印と日本語ラベルで示した図
手前は濃く鮮やかに、遠くは薄く青く。距離は色と濃さで描けます。

空気遠近法とは、遠くのものほど薄く、青く、コントラストが弱く見える現象のことです。同じ緑の木でも、目の前にあれば濃く鮮やかに見えますよね。ところが数キロ先の山に生えている木だと、あいだにある空気の層や細かな水蒸気が光を散らします。そのため色は薄まって青みを帯び、輪郭もぼやけて見えるのです。

つまり遠近感を出すには、「線」ではなく「色と濃さ」で距離を描くことが大切です。輪郭線をていねいに引くよりも、遠くのものを薄く塗るほうが、ずっと自然に奥行きが生まれます。

Tip まずは窓から遠くの山や建物を5分ほど眺めてみてください。手前の木や電柱と比べて、どれくらい薄く、青っぽく見えるかを確かめるだけでも、描くときの感覚が変わってきます。

近景・中景・遠景の3つの層に分けて描く

風景を近景・中景・遠景の3つの層に帯で分けた図解。各層の色の濃さとボケ具合の違いを日本語ラベルで示した図
画面を近景・中景・遠景の3層に分け、層ごとに濃さと輪郭を変えます。

描き始める前に、画面を3つの層に分けて考えましょう。

近景:紅葉した木や草むら

画面のいちばん手前にあるものです。赤・橙・黄などの暖色を使い、強めの筆圧で紙の目が埋まるくらいまで塗り込みます。輪郭もくっきりさせてください。

中景:少し離れた林や丘

紅葉の色に茶色や灰色を少し混ぜて、近景よりひと段階落ち着いた色にします。筆圧は中くらいにして、輪郭はやや柔らかく描きます。

遠景:空に近い山並み

薄い青、青紫、灰色を中心に使い、紙の白が透けるくらいのごく弱い筆圧で止めます。輪郭は線で囲まず、色の境目をぼかしてください。

Tip 塗り始める前に、層ごとの色を2〜3色ずつ決めておきましょう。紙の端で試し塗りをしておけば、途中で迷わずに済みます。

色とコントラストで奥行きを出す——3つの変化

奥行きを出す3つの変化(彩度が下がる・青みが増す・明暗差が小さくなる)を並べて示した図解。日本語ラベル付き
彩度が下がり、青みが増し、明暗差が小さくなる。遠くに起きる3つの変化です。

遠くになるほど、色には次の3つの変化が起きます。

  • 彩度が下がる:鮮やかな赤い紅葉も、遠くでは赤茶色や灰みがかった色に見えます。
  • 青みが増す:遠景はもとの色が何色でも、青を1〜2割ほど重ねるイメージで塗ってみてください。
  • 明暗の差(コントラスト)が小さくなる:近景では影を濃く入れますが、遠景では明るい部分と暗い部分の差をほとんどつけません。

濃さの目安は、近景を10とすると中景が6〜7、遠景が3〜4です。

仕上げ 最後に「空気の層」を足しましょう。中景と遠景の上から、薄い青か青紫をごく弱い筆圧で横方向に1〜2回重ねます。全体がふわっと霞んで、山が一歩奥へ下がったように見えるはずです。

秋の風景で実際に描く手順(霞んだ山と朝もや)

朝もやの中の山を描く4ステップの手順図。下描き→遠景→中景→近景の順に描き進める様子を日本語ラベル付きで示した図
下描き、遠景、中景、近景。遠くから手前へ描き進めます。

それでは、朝もやの中の山を実際に描いてみましょう。

  1. 下描きは軽く、遠景から

    薄い色の色鉛筆で、山の稜線、中景の林、手前の木の位置をごく軽く描きます。遠景から順に位置を決めると、重なり方がわかりやすくなります。

  2. 遠景を薄い青紫で

    山並みを弱い筆圧で塗ります。山のすそは塗らずに紙の白を残してください。この白がそのまま朝もやになります。

  3. 中景を中間の濃さで

    林をくすんだ橙や黄土色で塗ります。下のほうは白を残してもやに溶け込ませ、上から薄い青をひと重ねします。

  4. 近景を濃く鮮やかに仕上げる

    手前の紅葉を赤や橙でしっかり塗り込みます。影の部分には濃い茶色を入れ、明暗の差をはっきりつけましょう。

Note 描く順番は、遠くから手前へ進めるのがおすすめです。あとから描いたものが前に重なるので、自然に遠近感が生まれます。
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用意するもの

近景の赤・橙・黄、中景の茶色や黄土色、遠景の薄い青や青紫、灰色。鮮やかな色と落ち着いた色の両方がそろっていると、層ごとの色を選びやすくなります。

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まとめ

  • 遠近感は「線」ではなく「色と濃さ」で描きます
  • 画面を近景・中景・遠景の3層に分け、層ごとに色を決めてから塗り始めます
  • 遠くほど彩度を下げ、青みを足し、明暗差を小さくします(濃さの目安は近景10、中景6〜7、遠景3〜4)
  • 朝もやは紙の白を残して表現し、遠くから手前の順に描きます

まずは窓から見える遠くの景色を、3つの層に分けて観察するところから始めてみてください。

遠くの山をひと塗り薄くするだけで、紙の上に秋の澄んだ空気が広がります。

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