雨が降ると、出かける予定がなくなって、なんとなく手持ち無沙汰になりますよね。でも、絵を描く人にとって雨の日は、実はごちそうのような一日です。窓ガラスを流れる水滴、いつもよりやわらかい光、にじんだ向こうの景色——晴れた日には見られないものが、手を伸ばせば届く場所にそろっています。
しかも窓辺なら、濱れる心配も、荷物を持ち歩く必要もありません。色鉛筆とスケッチブックを持って、椅子をひとつ窓の近くに寄せるだけ。今回は、雨の日の窓辺の風景を色鉛筆で描くための、具体的なコツをご紹介します。
窓ガラスの水滴は「塗らずに残す」
雨の日の主役は、やはりガラスについた水滴です。水滴を描こうとすると、つい白い色鉛筆を上から乗せたくなりますが、これは思うようにいきません。濃い色の上に白を重ねても、くすんだ灰色にしかならないからです。
うまくいくのは、最初から紙の白を残しておく方法です。手順はこうです。
-
水滴の位置を決める
水滴を置きたい場所に、鉛筆でごく薄く小さな丸をいくつか描きます。あとで消せるくらいの筆圧で十分です。
-
丸を避けて背景を塗る
ガラス越しの景色を塗るとき、先ほどの丸の内側には色を入れず、まわりだけを塗り進めます。ここが水滴の明るさになります。
-
下側にだけ色を入れる
塗り終わったら、丸の下側にだけ背景と同じ色をうっすらと入れます。水滴の中に景色が映り込んでいる状態です。
-
輪郭をそっと締める
丸の上側は白いまま残し、輪郭を細い線でそっとなぞって仕上げます。線が濃くなりすぎると、シールのように見えてしまうので控えめに。
水滴は「上が明るく、下が暗い」のが基本です。光は上から入り、水滴の下側に色が集まって見えるからです。この明暗を守るだけで、ただの白い丸がぷっくりとした水の粒に変わります。

ガラスの向こうは、輪郭をぼかす
雨の日の窓の外は、すべてがぼやけて見えます。ここで大事なのは、手前(ガラス面)はくっきり、奥(景色)はぼんやりという差をつけることです。この差が、一枚の絵に「ガラス一枚ぶんの奥行き」を生みます。
奥の景色をぼかすコツは三つあります。
- 輪郭線を引かない。色の面と面を隣り合わせるだけで形をつくる
- 筆圧を弱め、鉛筆を寝かせて広い面で塗る
- 塗ったあと、指先やティッシュで軽くなでてなじませる
建物や木を描くときも、窓枠や葉の一枚一枚は描き込みません。「暗い緑のかたまり」「灰色っぽい四角」くらいの大づかみで十分です。細部を省くほど、雨の日らしい空気が出ます。
逆に、窓枠やサッシ、手前に置いたカップなど、ガラスのこちら側にあるものは、しっかり濃く輪郭を描いてください。ここがくっきりしているほど、外の景色のぼやけ方が引き立ちます。

雨の日の色は、灰色ではありません
「雨の日=グレー」と思って灰色一色で塗ると、絵はどんよりと重くなってしまいます。実際の雨の日の景色をよく見ると、そこにあるのは灰色ではなく、青みがかった緑、紫を含んだ灰、少しくすんだ水色です。
おすすめの重ね方はこちらです。
- 空・遠景 → 薄い水色 → 上から青紫をふんわり
- 木や植え込み → 青緑 → 上から少しだけ茶色を重ねて落ち着かせる
- アスファルトや屋根 → 灰色 → 上から青か紫をひと重ね
- 濱れて光っている部分 → 何も塗らずに白を残す
ポイントは、どの色にも少しだけ青か紫を混ぜることです。雨の日は空気に水分が多く、景色全体がうっすら青いベールをかぶって見えます。この共通の色を全体に薄く通してあげると、バラバラだった色がひとつの風景としてまとまります。
そして忘れずに、濱れた路面や葉の表面に、白い部分をいくつか残してください。雨の日の絵は、暗い色より「残した白」が効きます。

雨の日の景色は、青と水色と緑の、ほんの少しずつ違う色で成り立っています。この記事で挙げた色をひと通り含んだセットがあると、混色で悩む時間が減ります。
色鉛筆 24色 Seascape|油性・丸形・3.0mm・ソフト芯|缶ケース
海景をテーマに選ばれた24色は、青・水色・青緑の刻みが細かいセットです。雨の日の空や濱れた植え込みのように、青みを含んだ色を探す場面で頼りになります。まず一箱から始めたい方に。
¥1,280(税込)
商品を見るもう少し色の幅がほしい、灰色に紫を重ねるような微妙な調整も楽しみたいという方には、中間色の多いセットという選び方もあります。
色鉛筆 72色|油性・丸形・3.3mm・ソフト芯|紙製ケース
くすんだ水色、紫を含んだ灰、青みの強い緑——雨の日の景色に必要な中間色がひと通りそろいます。芯がやわらかいので、筆圧を抜いて薄く重ねるぼかしも作りやすい一箱です。
¥1,580(税込)
商品を見る15分で描ける、窓辺スケッチの進め方
長い時間をかけなくても、雨の日のスケッチは十分楽しめます。むしろ短時間のほうが、迷わず勢いのある絵になります。
-
最初の1分——画面を区切る
窓枠の位置を薄い線で決めます。どこで画面を切り取るかを最初に決めておくと、あとの迷いがなくなります。
-
次の5分——外の景色を大づかみに
ガラスの向こうを、色の面だけで塗っていきます。輪郭は描かず、かたまりとして置くのがこの段階のコツです。
-
次の5分——手前を濃く描き込む
窓枠やサッシなど、ガラスのこちら側にあるものを濃く描きます。ここで奥と手前の差が一気に出ます。
-
最後の4分——水滴と光を置く
水滴を入れ、光っている部分を白く残して仕上げます。最後まで白を残しておけたかどうかが、仕上がりを分けます。
大切なのは、外→手前の順で描くことです。奥から手前へ進めると、水滴や窓枠が景色の上に自然に重なって見えます。
そして、雨は刻々と変わります。降り方が強くなったり、日が差したりするたびに、同じ窓でもまったく違う絵になります。「今日の雨」を一枚残しておくと、あとで見返したときに、その日の音や気温まで思い出せるはずです。

まとめ——雨の日を、待ち遠しい日に
今回は、雨の日の窓辺を色鉛筆で描くコツをご紹介しました。
- 水滴 → 塗らずに紙の白を残し、下側にだけ色を入れる
- 奥の景色 → 輪郭を描かず、指でなじませてぼかす
- 色づくり → 灰色ではなく、青と紫をひと混ぜした色で
- 進め方 → 外から手前へ、15分でも一枚になる

雨の日は、出かけられない日ではなく、家の中で一番いいモチーフに出会える日です。窓のそばに椅子を寄せて、色鉛筆を数本手に取れば、それだけで小さなアトリエができあがります。次に雨が降ったら、ぜひ窓辺の一枚を描いてみてください。
アトリエの散歩道では、発色がよく描きやすい色鉛筆を取り揃えています。雨音を聞きながらの一枚に、お気に入りの一本を添えてみませんか。